今日、明日は隣町でスポーツの県大会が行われます。
陸上の部で地区大会で優勝したジョイジョイとリッキーBが、選手として朝早くから出かけていきました。
でもそんな中、サッカーで優勝したはずのジェイエムはお留守番。朝から早起きしてみんなの朝食を作っています。
実はジェイエムは出生証明書がないので、公式戦には出られないんです…。
なんとか県大会に間に合わせるために、弁護士に相談したり、地方裁判所の判事に相談したり、
神父さんに便宜を図ってもらったりといろいろ手を尽くしたんですが、出生証明書を作るには
「本当に出生証明書がないこと」を証明したり、「同姓同名の人が同一人物ではないこと」を証明したり、
「同姓同名の母親が生んだ子と同一人物ではないこと」などを証明しなければなりません。
そして、こういった「〇〇でないこと」を証明するのって、限りなく難しいんです。
フィリピンの役場はまったくもって別の地域の役場とデータの共有をする気などないので、
すべての手続きは、その地域に行かないと全然進みません。
極端に言えば、ジェイエムと同姓同名の人がマニラにいた場合、マニラの役所に行かなきゃいけないんです。
それで、何年も前から手続しているのに、いまだに出生証明書が取れないでいます。
さぞや落ち込んでいることとは思いますが、そんな様子はまったく見せず
「先生がスポーツ大会の引率でいないから今日学校休みなんだ!そうじ手伝うよ!」と言って
本棚のそうじを手伝ってくれました。ごめんよジェイエム、今年こそは間に合わせようと思ったんだけどね…。
他にも学校が休みになった子はたくさんいるので、その子たちを集めてみんなでサッカーをしはじめました。
全員で群がってもジェイエムはボールをキープし続け、ひょいひょいと他の子たちを抜き去っていきます。
サッカーが終わると「コヤシン、ドライバー貸して!」と言うので、何に使うか聞いたら
「サンダルの鼻緒の部分を裏返しに付け替えて右足だったのを左に、左足だったのを右にするんだ。
こうするとサンダルのすり減りにくくて、倍くらい長持ちするんだよ!」とのこと。
サンダルなんて買ってやるのに、と言ったんですが、「いいよ、その代わりクリスマスにはサッカーボールをちょうだいね」と
あくまでもサッカーに前向きなジェイエム。
是が非でも次の大会には出られるようにしてやりたいですね。
読み書きのできない親から生まれた子は、高い確率で出生届をしてもらえないまま育つことになります。
そして、出生証明書がないので学校に行くことも、保険に入ることも、土地を買うことも、
正規雇用されることも、パスポートを取ることもできずに暮らしていくことを余儀なくされます。
これ以上の貧困の連鎖はありません。
ジェイエムに限らず、HOJとしてこの問題に真摯に向かい合っていきたいと思います。