HOJ創設時にドという男の子がいました。背中が大きく曲がっていて背丈が同世代の半分くらいしかなく、
耳もほとんど聞こえないという重度の障害を抱えていましたが、意志が強く、自立心の強い子でした。
学校という文化にどうしてもなじめなかったので、ほどなくしてHOJは出ていくことになりましたが、
その後も持ち前の性格で、強くサバイブしていました。
会話もほとんどできず、見るからに障害者、というドを雇ってくれるところはどこにもありません。
そのことを誰よりも自覚しているドは、自分のスキルを磨き、自分の才覚で生きていくことを選びました。
人通りの多いところでの靴磨きから始まり、靴修理、傘や鞄の修理、扇風機の修理と
できることを少しずつ広げていきながら、着実に「自分の生活」を築いてきました。
ここ数年は、自転車に乗って町中で修理の仕事を引き受けつつ、廃品回収もしてお金を稼いでいました。
ですが、新型コロナでいろいろなことが規制されるようになり、これまでのような働き方ができなくなりました。
あまり耳の聞こえないドは人の口の動きが意思疎通の重要なポイントなんですが、
みんながマスクをしている状況下では、値段の交渉や注文の受付もままなりません。
兄のチョイ、妹のピンピンは定職があるので、生活ができないというわけではないんですが、
自立心の強いドは、兄弟の世話になるというのが耐えられないようで、「HOJで仕事はないか」と言ってきました。
ちょうどウラワビーチの使っていなかったエリアを開墾して畑にするプロジェクトを始めたところですし、
チョコ兄さんのカカオ農園も草の伸び方がすごいらしく、人手不足とのこと。これはまさに渡りに船です。
HOJに戻ってきて、畑仕事などを手伝いながら暮らすことになりましたよ。おかえり、ド!
何しろ自立心が強いヤツなので「自分が可哀そうだと思われて支援されている」と感じたらたぶん出て行ってしまうと思うので、
「本当に人手が足りなくて、来てもらってありがたい」と伝わるように、
充実感を持てる程度にコキ使ってやろうと思います。(笑)