「ゴミ山」を見に行った翌日は、アイさんが運営している町中の幼稚園を案内してもらいました。
こちらは行政とも協力し合って、20年くらい前からずっとやっている活動です。
イージェイと同じくらいの歳の子たちが大勢集まっていました。
このエリアは下町というか、知り合いのいない状態で迷い込んだら私でもちょっと不安になる地域です。
ですが、20年ここで幼稚園をやっているということは、この辺りの若者はほぼ全員卒業生!
どこに行っても笑顔で迎えてくれます。
田舎の人々の暮らしには慣れてきたハルカさんたちも、町の庶民の生活を見たのは初めてです。
さすがに写真は撮りませんでしたが、長屋と呼ぶにふさわしい家の中まで見せてもらいました。
傾いてボロボロの家の中にも、意外に液晶テレビやエアコンがあったりして私も驚きました。
HOJも地域との結びつきは強いんですが、幼稚園を運営するというのはさらに強いですね。
出入りするこどもの母数が全然違うので、本当に近所中と顔見知りになれます。
ちょっとHOJでも参考にできる部分があるのではないかな、と思いました。
きのうもお伝えしましたが、このダバオでの「ゴミ山&下町幼稚園見学」、
上限4名でアイさんが案内してくれます。HOJ滞在の前か後にダバオ滞在を2日入れれば両方回れます。
興味のある方はぜひご連絡ください!
きのうはダバオ市にあるゴミ捨て場についての基本情報をお伝えしましたが、
今日はその続きで、そこでこどもたちのために行われている活動についてお伝えします。
ここ最近、何度かHOJに来てくれているアイさんが、ここで幼稚園を運営しています。
もともとはドイツのNGOが入っていたのが、撤退してしまったので、
現地スタッフさんたちの給料を肩代わりするような感じで、活動を引き継いだそうです。
前はトラックの行き交う道路のそばに施設があったそうですが、
より、こどもたちの家に近い場所に土地を買い、建物を建てて、そこにこどもたちを集めています。
平日は午前中の2時間の活動で、近隣のこどもたち14人くらいが集まるそうです。
そもそもここは「不法居住区」なので、幼稚園にも認可が下りるはずもなく、
未認可、つまり、行政からは何の支援もない状態で活動を続けています。
日曜には「炊き出し」をやるので近隣のこどもたち50人くらいが集まります。
私は日曜に活動を見させてもらったので、たくさんのこどもたちに囲まれることになりました。
みんな明るく元気でお行儀も良く、恰好も清潔に保っていました。
「ゴミ山の中で暮らしているこどもたち」というステレオタイプには当てはまらない感じです。
この日はお菓子を配ったんですが、HOJでこどもたちにお菓子を配る時の口癖で
「ゴミはゴミ箱に!」と言いそうになって、私は言葉を飲み込みました。
町中のゴミ箱に捨てられたゴミが集まるこの場所で、「ゴミはゴミ箱に!」という言葉はあまりにも空疎です…。
こどもがゴミ拾いに行くことは制度上は禁じられているそうですが、もちろん住んでいる人たちが守っているはずもなく、
こどもたちもゴミ拾いに行くのが常態化しているそうです。
ガラスや鉄片、まぎれた注射針などでケガするリスクもありますし、
仮にゴミ拾いに行かなかったとしても、ゴミの崩落、発火、水源汚染、ガス発生などのリスクはあります。
この状況を抜本的に解決しようと思ったら、
「最新技術で、あまり有毒ガスが出ないゴミの処理場を作る」
「きちんと退去料を払い、退去後の住まいを保証し、退去後の暮らしのために職業訓練も行う」
「そもそもゴミの量を減らすべく、商習慣、消費習慣を変える」
といった、ものすごく大がかりな、時間とお金のかかる対策が必要なわけですが、
外国人が運営するNGOにできるラインを大幅に超えているのは言うまでもありません。
ならば少しでも、現状の中でこどもたちがマシな暮らしができるようにと、
ここに幼稚園を作って、毎週ここに通い、住民たちと関係づくりをして、
いざという時に支援ができるかたちを保ち続ける、というのが最適解なのかもしれません。
HOJに来る方で、この活動に興味のある方、支援したいという意志をお持ちの方は、
ぜひ事前にご連絡ください。あまり大勢でゾロゾロと行くのは微妙なので、
3~4人を上限に案内してくれるそうです。
この活動は「より手厚くする」ことや「より大きく広げる」ことよりも
「地道に長く続けて、いざという時に支援してくれる仲間を増やす」のが
何より大事だと感じました。みなさんも興味を持っていただければ幸いです。
昨日から1泊2日でダバオの「ゴミ山」での支援活動を見に行きました。
マニラの「スモーキーマウンテン」が国際的に注目され、問題視された90年代の終わりに、
フィリピンでは「ゴミを燃やすことを禁止する法律」を作ったので、
それ以来、ゴミは各都市で「ただ集めて埋める」ことになりました。
ダバオでは町から40分ほど西南の方向に行った山間の地域がゴミ捨て場として選定され、
ダバオの人口160万人ぶんのゴミが毎日、ダンプトラック70台分、ここに捨てられています。
写真1:20年かけて集まったゴミはもはや埋めることができず、山になっている
ただ積まれたゴミは、いつ崩れるか分かりませんし、リチウム電池などからの発火による火災のリスク、
雨によって漏れ出る有害な水のリスク、いろいろな廃液が混ざることによって発生する有毒ガスのリスク
などがあるため、近隣に住むことは禁止されているんですが、
元々住んでいた人たちで、立ち退き料もなしには引っ越せない人たちがそこに残っただけでなく、
このゴミ山を「宝の山」として集まって来る人たちもいて、現実にはゴミ山のすぐ周りに、約350世帯が住んでいます。
写真2:ゴミ山の中腹に見えるのは家ではなく作業小屋
そこに住む人たちの生業は主に「ゴミの中からお金になるものを集めること」。
プラスチック、カン、ビンなどの資源ごみはもちろん、まだ着れる服、まだ使える電化製品、
まだ使えるオモチャなど、とにかく使えるものをゴミ山から探します。
稀に1000ペソ札などの現金や、貴金属などが見つかることもあるそうで、
35万ペソ(約90万円)の純金時計が見つかったことがあるというのが、語り草になっています。
写真3:ここから先は長靴などの装備がないと危なくて入れない
その一方で人体の一部が見つかったり、箱に入れられた赤子の遺体が見つかったりすることもあったり、
ガラスや尖った金属でケガをしたり、ひどい場合には使用済みの注射器などでケガをする場合があり、
深刻な病気になったりするリスクもあります。
写真4:「立ち入り禁止」のゴミ山と居住区を隔てる壁には大きな穴が空いていて出入りは実質自由
ですが、この仕事には「一攫千金」の魅力があるらしく、一度慣れたらやめられない、
ギャンブルに似た要素がある感じがしました。
「最貧困層の人たちがここに住むことを余儀なくされている」というよりは、
「この生活に適応してたくましく暮らしている」という感じです。
でもそれは、ここで住むことをある意味で「選択」している大人の話であって、
ここに住む約700人のこどもたちには、ここに住む以外の選択肢はありません。
明日は、その「こどもたち」に焦点を当てて、この話を続けたいと思います。